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少し考えて出した答えは、正解だったらしい。
辺りを見回してそいつの姿を探していると、左側の校舎の角から、加住が現れた。一度だけ見たことのあるあの恐ろしいほど冷たい笑みを浮かべて…。
顔を上げた先輩も加住を見る。
一瞬にして、表情がこわばったのが目に見えて分かった。
冷や汗を一杯流して、一歩ずつ後ろに下がる先輩。
それを無視して、加住は全く顔を変えないまま、2倍のスピードで近づいていく。
俺は、その中に入ることなんてできずに、2人を見守る。
ついに、その距離が0cmになって、迫力や恐怖に耐えきれず、先輩が腰を抜かして尻餅をつく。
「余計なことは言わずに、謝ったらさっさと帰れって言いましたよね。もういいです。二度と立花さんに近づかないでください。今すぐ消えていただけますか」
端から見てる俺でさえ、その場から動けなくなってしまう。
目の前で見ている先輩がどれだけ恐怖を感じてるかはわからないけど、加住が言い終わるのを待たずにどこかに走り去っていった。
「立花さん。大丈夫でしたか?」
冷たさは一気に消え、俺に向けるその笑みからは、心配よりも愉快さの方が伝わってくる。
「…加住。先輩に何したんだ」
「そうですね。ちょっと脅して、立花さんと何があったか聞きました」
加住は、俺の前で嘘はつかない。
それが嬉しくもあり、逆にそれほど俺の事が好きなのかと思うと、胸が苦しくなる。
「全部、聞いたのか…?」
「はい。1年の時、あの人に強姦されそうになった事も、それがトラウマで誰とも話さなくなったことも「やめろ!!」
それ以上は聞きたくない…!
もう、こんな嫌な記憶は、いらない!!
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