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でも、加住はまだ続けた。
「それでも、サッカーを続けてたあなたを、不慮を装って事故を起こさせたことも」
あの事故での怪我は大したものではなかった。
すぐに、とはいかないが、少し時間をおいたら今まで通り部活に参加できる程度のもので。
けど、それ1つで俺の心を折るのは十分だった。
サッカー部に戻るどころか、ボールを蹴ることでさえ、怖くなった。
チームメイトと関わることも減っていって、退院から1週間後には、完全に俺は関わらなくなった。
部員全員が俺と先輩の間に何があったのか知ってるからなのか、誰も近づいては来なかった。
友達もどんどん離れていって、もうそこには根っからのサッカーバカだった立花大翔は、いなくなっていた。
「それを知って、加住はどうしたい?昔の俺に戻したい?それとも…俺のこと嫌いになった?」
加住の気持ちを試すかのように、俺は意地悪な事を言う。
なぜか、溢れてきそうになる涙をこらえながら。
「そんなこと、あるわけないです。僕は、本気で立花さんの事が好きです。だからこそ、あなたのことをもっと知りたいんです。これから先、どんなことを知ったとしても、立花さんを嫌いになることはありません。それだけは、覚えておいてください」
顔をゆがませ、泣きそうになりながら必死に思いをぶつけてくる。
対して俺は、何も伝えられてない。
でも、この気持ちを言葉にすることなんて、できない…。
脳裏にちらつくあの忌々しい記憶が、俺の心を邪魔している。
伝えたいのに…!!
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