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 「今日、実は長年うちが勝てなかった藤城高校との練習試合があるんです」  “藤城高校”。その言葉を聞いて、すぐに1年の頃を思い出す。  先輩たちと藤城の試合。初めて1点差まで追い詰めたあの伝説の試合、俺はベンチにも入れず応援席で見る事しかできなかった。  1年ぶりに藤城がうちに来る…。  本当に来るのか、それは極力サッカー部と関わらずにいた俺が知るはずもない。  「それで、今日の試合、もし僕らのチームが勝ったら、1つだけ願いを聞いてくれませんか?」  それは、加住にとってとても無意味に近いかけだった。  過去最強と言われた2年前のチームですら、最終的には3点差で負けている。  今のチームの強さは知らないけど、あの藤城に勝てるはずがない。  脳裏にその文字が浮かぶ。  気付いたら、俺は加住の言葉に頷いていた。  「のってくれてありがとうございます。願い、聞いてもらえるように頑張るので、絶対見に来てくださいね。試合開始は1時ですので」  加住が去った後、今更後悔するが時すでに遅し。  当の本人がいなくなってからではどうしようもなく、最後の数分だけ見ようと決め、束の間の休息を取るため、俺はソファに横になった。
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