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「じゃ、またな」
「おう、テスト忘れて遊ぶなよ」
「へっ!うるせー」
季節は冬、時は夕暮れ。
木々の葉はすでにすべて散り落ち、ちらちらと雪が降り始めている。
日も沈みかけ、空を覆い隠す雪雲が辺りをさらに暗くする。
何度も通い慣れた帰り道。
通る度に吠えてくる犬、チカチカと不規則に点滅する蛍光灯。
いつもと同じ変わらぬ道だ。
が―
「おい少年、これを預ける!あとは任せた!」
「は……?!のぁ!?」
突如、全力疾走していた少女が急ブレーキをかけ、風呂敷を100mの距離から投げ渡される。
俺はそれを、物凄い衝撃と共に何とかキャッチすると、少女はそれを確認し、着ていたコートを翻してまた全速力で走り去っていった。
「お、おい!ちょっとま―」
呼び止めようとしたが、彼女はすでにそこにはいなかった。
なんだったのだろうか…
と、そう考えながらも、あの娘から投げつけられたそれに目をやる。
乱暴にも投げたわりには、丁寧に風呂敷で包んであるそれは、投げる時以外は大事に扱われたのだろう、傷や綻びは一切なかった。
「……捨てるのもなんだし、どうするか…」
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