第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
以前ネットで読んだことがある。 ある拷問方法でその男は目隠しをされて手足を拘束されてナイフで体を傷つけられる。 しかし、そのナイフは偽物でキズなんて付いていない。 傷口からはただの水がずっと流れ続けているだけ。 しかし、目隠しされている男はそれをほんものの血と勘違いしている。 その男は、傷一つないのにも関わらず、顔は青ざめ、脈も弱まり衰弱して終いには死んでしまうという話だ。 今のおれの状況そっくりじゃないか! しかし、おれは本当に血が出ているのかそれともこの話のように本当は傷つけられていないのかわからなくなっていた。 本当に傷つけられていないとしたら、なぜおれの右腕の感覚が無いんだ。 これが、ほんとうの傷によってのものなのか、おれの勝手な妄想によって脳が勘違いしているのか...? どちらにせよ、早くこの状況から脱しなければならないだろう。 さもなければ本当に死が待っている。 「....なあ、誰に雇われたんだ?」 「....」 「もしかして、嫁か?」 「お答えできません」 「嫁は、少し前からおれが浮気をしていることに感づいていたようだったからな」 「もし、そうだとした謝る。もう、浮気相手とも二度と会わないから、許してくれないか」 「.....」 「...違うのか?」 「お答えできません」 「じゃあ、なんだってんだ!会社の金を少しばかり横領したことか ?そんなもん上のやつらだってやってるぞ!」 「....」 「くそう!いつまでだんまり決め込むきだ」 意識がもうろうとしてきた。 きっと、本当に血が流れているんだ。 2リットルの血が失われるまで一体あとどのくらいなのだろう... おれはこんなところで死ぬのか... 家族だっているし、仕事でもやっと昇進したっていうのに... 一体誰がこんなことを... 昇進...? まさか、あいつか?
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加