再会

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集中できなくなった頭で、 これ以上話の続きを読むのは無理だと思った俺は 本を閉じ窓に強く打ち付ける雨粒に視線を移した。 真っ暗なガラスには、難しい顔をした自分と近くにある自販機でドリンクを買おうとしている女性の滲んだ姿が映っている。 背を向けているから顔は見えないけれど、ピンと伸びた背筋にある人を思い出して懐かしい気持ちになった。 6年前、大学卒業前に突然姿を消した2つ年下の幼馴染。 お互いの両親が友達同士で、家は離れていたけど小さい時からしょっちゅう会っていた。 いつも鼻を垂らし、ヒラヒラのスカ-トで俺の後をついて回ってきた女の子は、よく泣き、よく笑う、表情豊かな子だった。 高校、大学を俺と同じ学校に進み、旅行関係の会社への就職も決まっていたのに ある日、彼女は春を待たずにどこかへ行ってしまった。 置手紙も何も残さず…。 いくら携帯に掛けても、使われていないことを知らせる機械的なアナウンスが流れるだけ。 彼女を知ってる人に手当たり次第聞いてみたけど、 彼女の行方を知ってる人は誰ひとりいなかった。
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