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駅の改札を出て、履歴のトップにある番号へ電話した。
「もしもし、潤君。今駅に着いたけど何か買ってくものある?」
『お疲れ~。ん~……今日はパスタだから。白飯食べたきゃレンチンの買ってこなきゃないよ?』
「パスタでいいよ」
『じゃあ、何も要らないから、早く帰っておいで』
「了解」
携帯を耳から外す。
それと同時に、少し高い声が俺の名前を呼んだ気がした。辺りを見回すけど、声の主らしき人物はいない。
空耳かな?
首をかしげ、携帯をポケットへ突っ込み足を踏み出す。
街路樹の向こうの車道をヘッドライトを照らしたバスが前方から走ってくる。バスは俺の横を通り過ぎていった。
古めかしいバス。今時使ってないでしょ? ってレトロな型をしたバスだった。
ヒンヤリとした夜の空気が首筋を撫でていく。
あれが夢じゃなかったら
今もきっと
あのバスはどこかで走っているのかもしれない……。
完
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