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「着いた……」
潤君が足を止めて、ポツリと呟いた。
湖はうっすらと霧に覆われていたけれど、太陽の日を浴びて水面を輝かせてる。開けた空間。でも遊歩道はここで終わりだ。ここからどこへも行けない。潤君がポケットから携帯を取り出した。
「旅館の中で事故が発生しました。重傷者がいます。救急車をお願いします」
潤君は手短に言うと、携帯をポケットへしまった。
「繋……がったの?」
「うん。……良かった」
ホッとした顔。潤んだ瞳で俺をジッと見つめる潤君にギュッと抱きついた。
「もう、大丈夫だね」
俺の体に両腕が回される。きつく抱きしめる潤君の肩がふるふると震えている。俺はその肩に顔を埋め擦りつけ言った。
「ありがとう」
潤君の手が俺の背中を撫でた。その手がだんだんあがって、うなじに触れる。顔を徐々に上げた潤君がどこか痛いのを堪える様な表情で呟いた。
「ごめんな?」
「俺の方こそ、ごめん。潤君は留まろうとしてたのに」
潤君を見上げ謝る俺に、潤君は首を軽く横に振って、顔を近づけてきた。塞がれる口。うなじを押さえられて、引くことができなかった。いや、引くつもりもない。
一瞬ビックリはしたけど、俺は目を閉じ、代わりに唇を少し開いた。
突然始まったキス。潤君と初めてするキス。
弾力のある唇が俺の唇に吸い付き、角度を変えて啄ばみ、挟み、何度も繰り返す。
俺のうなじを押さえていた手の平は、背中を撫で回しながら腰まで下り、セーターの裾をたくし上げ、服の中へ潜り込んできた。肌に直接感じる潤君の手の平の感触と体温。冷え切った体にジンジンと潤君の熱が沁み込んでくる。熱くてたくましい手。
唇の隙間から舌が入り込み口内を舐められた。舌をクッと吸われ、体の芯に電流が走り抜ける。唾液をじゅるっと啜る音に軽く息をついた。
潤君から与えられる全てに背筋が震え上がった。
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