第4話

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「他の皆さんは、全員……旅館の中で……旅館の従業員さん達もだって」  俺は瞬きを一度して、姉ちゃんを真っ直ぐに見た。 「……もう一人。いたよね?」 「あのね、気を落とさないで欲しいんだけど……あんたの会社の一緒に旅行に行った人達は全員……」 「そうじゃない」 「え?」 「いたでしょ? 俺の隣に。いたよね?」  母ちゃんと姉ちゃんは顔を見合わせ悲しそうな顔をした。 「……発見された時、あんたは一人で道に倒れてた。そう聞いたわよ?」  いた。いたんだ。潤君が。  俺はずっと繋いでた方の手を持ち上げて見た。  視界が滲んでぼやける。  いたんだよ。ずっと一緒に。  ……覚えてる。あったかくて大きな手。しっかりと、ずっと、強く握ってくれていた。  全部覚えてる。全部。  熱も感覚も。  手をグッと強く握りしめた。  白衣を着た医者が診察に来た。  あちこちに聴診器を当て、いくつか質問され、指が何本に見えるか? とかいろいろ聞かれて答えた。 「うんうん。この分なら明後日には退院できそうですね。佐伯さん、警察が事情聴取に来ますけど、明日にして貰いましょうか?」  医者が慰めるような口調で言ってきた。 「……」  母ちゃんの手が伸びてきて、頬にふわりと布が押し当てられた。右と左にも。  頬の一部がチリチリと焼けるように痛かった。  何も返事をしない俺の代わりに姉ちゃんが応えた。 「すみません」  医者はそっと微笑んだ後、言葉を続けた。 「もう一人の、患者さんは意識が戻るのが早かったので、もう済んでるんですけどね。佐伯さんはちょっと昏睡状態が長く続いたんで……」  その言葉にハッと視線を上げ医者を見た。 「もう一人って!」  言葉と同時に俺は医者に掴みかかってた。
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