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「うわ汚ッ」
孝太の部屋に入っての俺の第一声である。
「それほどでもねぇよ」
「照れんなや! 褒めとらんけん!」
全く。足の踏み場もない。あったとしても爪先立ちにならなければいけないし。もう最早人間の住むところではない。
「んじゃ頼んだで、俺の通い妻さん」
「誰が通い妻じゃ阿呆!」
悪態を付きながらも俺は週一くらいは掃除しに孝太の家にお邪魔する。ったく。何で一週間足らずでここまで散らかせられるんだろう。ってか自分でやれや!・・・・と口では言うが、俺は孝太の"通い妻"やるのは結構嫌いではないし孝太が自分で自分のことをしだすようになったらそれはそれで寂しい。なかなか複雑なのだ。
「うあッ! なんなんこれ! いつのパンツ!?」
「んー。・・・・先週雅紀が片付けてくれたからー・・・・最長でも六日前?ちなみに使用済みじゃけん。持って帰ってええよ。俺マニアにとっては喉から手が出るほど欲しい代物じゃろ」
「馬鹿たれ!きしょいわ! 誰がおめぇのパンツいるか!!」
しかも汚い!俺は迷わずゴミ袋にぶちこんだ。まだ掃除を開始して五、六分だがゴミはもう袋一杯分になろうとしている。
「ってか、お前結構偉い奴じゃな。エロ本一冊もねぇが」
「あぁ、当たり前じゃろ。今の時代はデジタルじゃけん。下手なとこアクセスせにゃパソコンや携帯ならタダじゃろ」
「・・・・・・・」
「ウソウソ!そんな俗物的な・・・・つぅか"俗物"の意味よぅ分からんけど、まぁとにかく、俺はそんなモン見たりせんけん!俺は雅紀一筋じゃけん!」
「阿呆!抱きつくなぁ!」
孝太の体重がずっしりと俺の背中にかかってきて足元がぐらりとよろける。コケたくない!こんな汚い部屋で!そんな思いが俺の足腰に力を与えた。なんとか踏ん張り孝太を支えた。
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