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「もおなんなんお前。ほんましんどいわ。・・・・・はぁ、もう気持ち悪くなってきた。吐きそうじゃし」
「ん?雅紀つわりか?」
「お前、つわりがなんなんか知っとんか」
「知っとら!当たりめぇじゃろ! ・・・・妊娠したときの・・・・んー・・・・アレ? でも俺と雅紀に不可能はない! さぁ雅紀! 俺の」
「黙れボケ変態!粗大ゴミと一緒にポイするでおめぇ!!ちょっ・・・・!なまめかしく体撫でくり回すんやめぇ!」
どうやら孝太のセクハラ魂に火がついたらしい。孝太は根っからのセクハラ魔でそれは男女問わず牙が向けられる。百歩譲って俺はええけど他の奴に過激にスキンシップするのは止めて欲しい。
「なぁ、雅紀」
「な、何ぃ」
ぎゅうっと孝太の腕に力が込められる。これから真面目な話に突入するらしい。背中に孝太の温かさを感じながら俺の中のふざけ心が静かに退散していく。
「俺らに子どもできたらどうじゃろな。・・・・俺、結構憧れなんじゃけど」
「・・・・・ん」
がさ。俺の手からゴミ袋がするりと抜ける。その代わりそれを握っていた手が孝太の手にそえられ、握った。
「なんか、両方とも親父だったらえれぇ逞しく育ちそうじゃな」
「はは・・・・確かに」
ふぅ。と孝太のため息。俺は孝太の手を一度ふりほどき、向き合ってから抱き締めた。
「俺、孝太のこと好きじゃけん」
「俺は好きじゃない。愛しとる!」
「ど、どう違うんかイマイチ分からん・・・・」
「あっほう!雅紀はまだまだガキじゃなあ!」
「やかましいわ!」
ぎゅうっと抱き締め返されて、内蔵が出るんじゃないかと思うほどそれはもう力強く抱き締められて、でも離さないで欲しくて、苦しいのを我慢して孝太の肩に顔を埋めた。
「俺、ずっと孝太の通い妻やってもええで」
「通わんでも妻になれりゃええのに。なぁ、雅紀」
馬鹿がつくほどお互いにベタ惚れしてるのにな。苦しいのも悔しいのも世間体も偏見も何もかも、ゴミと一緒にゴミ袋にぶち込めればいいのに。
俺と孝太の体が離れて暫く見つめ合った後に唇に感じた柔らかで温かな感触。これがずっと俺のだけのものであって欲しい。
2001218
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