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この広大で暗い宇宙。宇宙に端があるのかどうか、それは月の息子にも、太陽の娘にも分からない。まして地球の息子に分かるはずもない。ただ一つ分かることと言えば、無限の宇宙の中、きみときみとぼくが廻り会えたことは何億分の、いや、何兆分の一の奇跡なんだということ。
一日の殆んどを、冷たい月(ほし)の上で過ごすぼくの趣味は約三十八万km先の地球を眺めること。ぼくと地球の付き合いはもうずーっと、それはもう気が遠くなるほど前から続いている。時には遠くから、時には近くから、ぼくたちはお互いを美しいものの対象として見つめ合ってきた。
ぼくは約三十八万km先から彼の地球(ほし)の繁栄、堕落、再繁栄を見守ってきた。やがて出現する、彼の地球(ほし)を支配する生物。何て醜く高慢なのか。時折彼の地球(ほし)から立ち上る黒煙を見る。その度にあぁ生き物はなんて愚かなのだろうと思う。膝を抱えて煤り泣く彼を見ると尚更。
最近では彼の蒼く美しい髪がどんどんくすんでいくのが、彼の緑の瞳が色を失っていくのが、よく見られる。
まだおわりたくない。
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