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「ごきげんよう姫さま。相も変わらず眠そうですね」
「"姫"ってなんですか"姫"って。……こんにちは、先輩」
ぼくたちが殆ど日課のように交わす会話だ。現在進行系で保健室のソファに横柄に寝転がっているのはいっこ下の後輩の"姫"。勿論、これは本名ではない。ぼくが彼女に勝手につけたあだ名だ。毎日眠そうで、行けばいつもソファでうたた寝している。眠り姫からもじって"姫"。こういうことだ。
「いつもいつもよくそんな寝てられるな。テストとか後で困らない? それともあれ、センセの話なんて聞かなくても余裕、みたいなカンジ?」
「あ、ちょっと先輩」
言いながら姫が占領するソファの僅かな隙間に座ろうとした時、いきなり呼び止められた。
「私の半径五メートル以内に入ったらぶっとばしますよ」
「え? なんで」
言ってから理解した。なるほど。テーソーカンネンとかいうやつか。
「……だったらぼくもうすでにぶっとばされるくない?」
「? そうなんですか? なら今からぶっとばしに」
「いやいや、落ち着け。落ち着くんだ。ぼくは決してきみに乱暴しようとか考えてないしだいたい今のはきみが目測を誤っただけでしょうが……」
「むぅ……。それもそうですね」
納得したのか、ぼくをぶっとばす為に起こしていた上半身を再びソファに寝かせる。いやぁ、危なかった。ぼくはソファに座ることを諦め、その場で立つことにした。
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