15人が本棚に入れています
本棚に追加
恐怖に震えながら、俺はゆっくりと振り向いた。
そこに、男が立っていた。
返り血を浴びて真っ赤に染まった顔が、不気味に笑っていた。
男は血のついたサバイバルナイフを弄ぶように、くるくると回している。
「鍵沼の野郎、アンタの言うことを信じて俺を刺そうとしやがった。しょうがないから俺があいつを刺しちまったぜ」
「じ、じゃあ……、あの写真に写っているのは」
「鍵沼だよ」
男はサバイバルナイフを振りあげて、楽しそうに言った。
「幻影に殺されるのも、悪くないだろ?」
そう言ったあと、男は俺の胸にナイフを突き刺した。
鋭い痛みが、体を襲う。
男がナイフを引き抜くと、噴水のような勢いで血が噴き出した。
そのまま、俺は床に倒れ込む。
「あ……が……」
体が痙攣して、声も出ない。
床に広がっていく赤い血が、ぼんやりと見えた。
そして薄れていく意識の中で、男の最後の言葉が聞こえた。
「あーあ、また友達がいなさそうな奴を探さなきゃなあ」
『Close friend』――了
最初のコメントを投稿しよう!