第1章 分岐点

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ぴたん・・・ ぴたん・・・ 静かな、廃墟の中に立ち、少女は辺りに視線を彷徨わせる。 「ここ・・・どこ?」 今までに、行った事も無ければ、 話に聴いたこともない。 暗闇なのに、周りはしっかり見えている。 不思議に思いながらも、辺りを見回す。 少女はその場所が不安でならなかった。 一人でそこに居るからこその恐怖でもあるのかもしれない。 ぴたん・・・ ぴたん・・・ 水音が、嫌に耳について、この場所から離れようと一歩前へ出ると ゴソリ と黒い影が動いた。 「ひっ・・・」 ビクリと、背筋を粟立てて、身体が動きを封じられたみたいに、微動だに出来なかった。 指先が震え、視線だけで辺りを伺う少女は 周りの人が見れば、気味の悪いマネキンか何かだと思われそうな程。 ハッハッと、少女の呼吸が荒くなるのは 内蔵まで動きを停止しているかの様な錯覚が引き起こした軽い過呼吸かもしれないが 苦しみはない。 ただ、蠢く黒い影がモゾモゾと、少女に背を向けて何かをしているようだった。 呼吸が、若干おかしな事より、今はその黒いモノの先にあるナニカが気になった。 時折動く、黒い影が。 急に、ゆらりと身体を動かし立ち上がると、人の影のように見える。 少女は米神から流れる汗に、眉間に皺を刻んだ。 漠然とした恐怖ではあるが、それを “怖い” と、感じてしまっている。 ただの影かもしれない。 気のせいかもしれない。 前向きな考えは、目の前の人型がゆらりと身体の向きを変えようとしているのを見て、打ち砕かれた。 見ちゃダメだ! こわい、こわい!こわい。 米神から滴る汗が、首筋をなぞる不快感。 それが、恐怖を増長してるかの様だった。 もう、視線が合わさる所まで身体の向きは変わっていて、恐怖が身体を支配した刹那。 パン!! 強い音と共に、身体の自由がいきなり戻ったお陰で、ガクリと身体が崩れ落ち。 地面に四つん這いになるような格好で、音のした先を見た。 「お前は誰だ?」 目の前に立つ少年は、両手を合わせた形で、音の主は彼だったと解る。 その人が眉間に皺をたっぷり彫り込んで一言呟くように問い掛けてきた。 綺麗な顔立ちで、細身の身体が煌々と光を放っていて。 彼の周りだけ、清浄な空気に変わっているように見え、助かったのだと そう思った瞬間。 彼に答える前に目が覚めた。
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