第1章 分岐点

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燦々と輝く太陽、小鳥の囀(さえず)り。 どこにでもある、朝の風景は悲鳴と共に 慌ただしくなった。 「うわあぁっ!」 ガバッと、布団から飛び起きた時 辺りで鳥たちが飛び立った。 「ゆ、め?」 自分の部屋を一瞥(いちべつ)し、少女はベットから降りると、窓の外を見下ろした。 あまりにリアルな夢。 まだ、心臓もバクバクと先程の恐怖は、夢ではないと語っているようで怖かった。 少女の名前は、倉崎一花(くらさき いちか) 現在21歳の大学生。 髪は、セミロングで、身長はやや低めの149cmではあるが、性格は明るく 友達もある程度の人数はいる。 全てが普通な少女である。 昔に怪異と言われるモノと引き合った時期があったが、祖父の知り合いに助けられてからは、危険の察知はある程度出来たが 怪異には見る事も触れることも無かった。 それが今更何だというのか。 一花は、深い溜め息を漏らしてから 朝の支度を始めた。 “一花は、大きい器だから、難儀するなー” 優しく、頭を撫でながら心配を伝えてくれたおじいちゃんは、89歳で昨年病気でこの世を去った。 「はぁ。朝からなんか気分悪い」 学校に向かいながら、一花が呟くと 前方に歩く二人の影に、パッと表情が一変した。 「おはよー!!マナ、横沢くん!」 呼ばれた二人は、同時に振り返り、そこで一花は異変を感じた。 マナこと、箱田真中(はこた まなか)の顔色が真っ青で、横にいる横沢拓馬(よこざわ たくま)も、普段は明るめの茶の髪をワックスで立てて身長180cm誇示する謎な明るい性格で、人当たりもいいのだが、あまりいい顔色をしていなかった。 一花は、早めた足をゆっくりに戻し二人を覗き見た。 「なんか、あった?」 その声に、マナはビクッとあからさまに怯えた表情を見せた。 普段は、髪を一つに纏め、ポニーテールにしていて、今日の様に下ろしていること自体珍しい。 交流の深い一花には解るかも知れないが。 きっと、学校では“誰?”と聞かれるだろうと予測出来るほど、違うのだ。 顔付きも、髪型も。 「昨日さ・・・俺のダチが不意打ちで廃虚ツアーやり出して・・・」 横沢の言葉に、一花は息を飲んだ。 「なっ、何でそんなことに?」 朝方見た夢、それは廃墟で。 一花の夢と、関係はないかもしれないが 嫌に胸に引っかかる。
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