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なぁ澪時?と声を掛けた横沢に、澪時は答えるべく視線を向けた。
「その溢れる力の使い道が澪時に行ってるって事は、澪時が使い続けりゃ良いんじゃねぇの?」
「・・・そうだが、倉崎の流れ出る力の方が大きくて、それを受け取るオレの器が小さければ、どうなる?」
「溢れるって事か?」
「そう、そうなれば互いに溢れ出てしまって、どうにもならなくなる。
だからその時は、どこかで解放してやる事が必要になって来る」
「解放って出来るのか?」
「可能だ…けど、その際は恐らく怪異も人間もその異変を察知するだろうし、黙って置く事が不可能になる可能性が高い。
けれど、こうやって力を吸える人間も実は希少価値が高く、事務所で把握しているだけだが日本全体でも十人しか居ないんだ」
カチャッと置かれたカップが音を鳴らして皿の上に戻される。
誰もが、聞いた事のない話であり、関わった事もない話。
疑問に思う所さえ、解らない現状で四禮以外は皆黙り込んでしまった。
「オレが、そうならない様に道を探すし、文献とかも調べてみる。
それと、仕事だが基本怪異が絡む仕事が大半だから、倉崎も助手としてオレに付く以上は大変な思いをする事を覚悟して欲しい。
命がけの仕事だと、理解して欲しい。
だから、出勤時間がある訳でも無い、いつ呼び出しが来ても対応できるようにとの計らいもある。
本当はこんな話は他にはしないんだが、倉崎が信じるアンタらだったからここまで話したんだ、何かあれば協力も仰ぎたいと思う」
その言葉に、三人は首を上下させよろしくお願いしますと、言葉を告げると
四禮は仕事は終わったとでも言わんばかりに、テーブルの上にコーヒー代を置き喫茶店を出て行った。
「澪時君って年下だったよね?なんだかすごく威圧感あったね」
真中が注文したココアが既に冷たくなっている。
それを口に運びながらそう告げると、一花も首を上下させた。
「訳解らない事に巻き込んでごめんね?」
一花の言葉に、当事者が一番わけわからないって顔してたけど?と横沢が笑った。
「ホント…訳の解らない事だらけだよ」
一花は深い息を吐き出した。
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プロローグ章終わり。
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