第1章―1

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 親子が歩道を歩いている。  恐らくは20代くらいのお母さん。髪の毛はポニーテール。ピンクのワンピースの下にジーンズが見え隠れしている。その手を握って必死に歩いている女の子は、多分、3歳くらいじゃないだろうかと思われた。  まだ歩き方がおぼつかない。ともすれば転んでしまいそうで、見ているこちらの方が怖くなってしまう。お揃いの髪型。お母さんと同じポニーテールが何とも可愛らしい。親子だからか横顔が良く似ている。格好まで一緒。ワンピースに下はズボン。まるでお母さんのミニチュア。  お母さんのもう一方の手には、スーパーのビニール袋が持たれていた。一緒に買い物に行った帰りに違いない。晩御飯、何が食べたい? そんなやり取りもしていたかもしれない。  昼休み。2階の事務所から、そんな光景を見下ろしていた。  きっと、誰でも多かれ少なかれ、同じような経験をして来たはずだ。  それなのに自分の場合は違う。
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