第1章―3

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「ねぇ、そんな薄着で風邪引かないの?」  みゆきが眉間に皺を寄せた。 「風邪引いたって、看病をしてくれる男もいないんだから、死んでも風邪なんか引けないっつーの」 「そりゃあ、死んだら風邪も引かないわよね」  三十路女が寂しいわね。みゆきがそう突っ込んで、ケタケタと笑う。 「煩い、30歳で何が悪い。これからが大人の色気が出るところなの。これからよ、これから。それより、みゆきって幾つだっけ?」 「まだ26でーす。三十路までまだ時間あるからね」  煩い煩い。谷が唇を尖らす。 「そんな小娘に負けてなるものですか」  そんな二人のやり取りを気楽に眺めていたら、不意に谷がこちらを向いた。  裕、安部ちゃん、あんたらも20歳過ぎたばかりだからって、うかうかしてると、すぐに30歳になっちゃうからね。そう飛び火して、首をすくめる羽目になる。実際には安部は20歳。裕自身は22歳。まだまだ若い。
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