第1章―3

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 予約していた店まであと10分弱というところで、異変が起こった。  細い路地から駅前の大通りに出たところだった。同世代のやはり4人組みの男性グループとばったりと鉢合わせた。  ただすれ違うと思いきや、男の中の一人が、みゆきの顔を見て声を上げた。 「中山じゃねぇ?」  ただでさえ薄暗い道だ。すぐにはみゆきもピンと来ない。 「えっと……」 「ほら、高校で同じクラスだった酒井だって。酒井康男(さかいやすお)。覚えてない?」  縦にも横にも大きな男だった。短髪で髪を立てている。  数秒の間隔の後、あぁ、とみゆきも声を上げた。 「あぁ、柔道部のヤス!!」 「そうそう、俺俺、俺俺詐欺ーなんつってー」 「久しぶりじゃない。元気してた?」 「俺のギャグは無視かい」  返事するに値しないから。そうみゆきはさらりと言ってのける。
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