第1章―4

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 男が怖い。対峙するだけで身震いが止まらない。以前は会話なんて成立しなかった。我を失いパニックに陥ることなんて日常茶飯事だった。  それでも中山部品で働かせて貰って、男性と向かい合う機会を何度か経験しているうちに、少しずつであるが会話が出来るようになってきた。得意先の営業さんが事務所を訪れることも少なくない。お茶出しもするし、事務所の入り口で用件を聞くこともある。直接顔を合わせるわけではないが、電話での対応だってしなければいけない。それに社内にだって、部品を作る職人さんとして男性だって在籍している。  今では、差し障りがない程度には接することができるようになった。そんな自分を褒めてあげたいとも思う。しかし、男と向かい合って楽しめるかと言ったら、話は全く別だ。  今もそう。根元という男の紹介で訪れた居酒屋。どちらかというと和風の造作で落ち着きやすい雰囲気だ。建物自体は嫌いじゃない。しかし、状況が頂けない。
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