68人が本棚に入れています
本棚に追加
本当に些々とした変化。きっと谷や安部は気づいていない。それでも裕には分かってしまう。それくらいみゆきに依存してしまっている。
「みゆきぃ。聞いた?」
突然、谷が奇声を上げた。
「上原君、斉藤開発に努めてるんだって。すごくない? 一流企業よ。うらやましぃ。給料いいんだろうなぁ。ボーナスもすごいんだろうなぁ」
博美があまりにキーキーと甲高い声をはり上げるものだから、みゆきが両手で耳を塞ぐ仕草をする。
「あんまりお金のことばかり言ってると嫌われるよ。っつーか、あんた煩い」
「だってぇ」
「だってじゃない。あんた年、幾つよ。少し落ち着きなさいよ、ホントにもう」
斉藤開発は、主にアウトレットモールやショッピングセンターの開発をしている業界のトップ企業だ。そこから派生して、様々なクッズの総合商社としても躍進している。もちろん裕だって名前くらいは知っている会社だ。CMだってばんばん打ち出している。
結局、みゆきが上原と絡んだのはそれだけだ。たったそれだけ。
最初のコメントを投稿しよう!