第1章―4

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 本当に些々とした変化。きっと谷や安部は気づいていない。それでも裕には分かってしまう。それくらいみゆきに依存してしまっている。 「みゆきぃ。聞いた?」  突然、谷が奇声を上げた。 「上原君、斉藤開発に努めてるんだって。すごくない? 一流企業よ。うらやましぃ。給料いいんだろうなぁ。ボーナスもすごいんだろうなぁ」  博美があまりにキーキーと甲高い声をはり上げるものだから、みゆきが両手で耳を塞ぐ仕草をする。 「あんまりお金のことばかり言ってると嫌われるよ。っつーか、あんた煩い」 「だってぇ」 「だってじゃない。あんた年、幾つよ。少し落ち着きなさいよ、ホントにもう」  斉藤開発は、主にアウトレットモールやショッピングセンターの開発をしている業界のトップ企業だ。そこから派生して、様々なクッズの総合商社としても躍進している。もちろん裕だって名前くらいは知っている会社だ。CMだってばんばん打ち出している。  結局、みゆきが上原と絡んだのはそれだけだ。たったそれだけ。
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