毒はいつしか蜜の味

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飲み会の幹事なんて、ホントやるもんじゃない。 酒はほとんど飲めないし、上司や同僚に呼びつけられては小間使い。 酒の弱い佐々木が早々に潰れたせいで、俺は全ての責任を一人で取らされる羽目になり、周りがひと段落つき始めた頃に、ようやく落ち着いてゆっくりと酒を愉しめる時間が出来た。 「マジで疲れたわーー……」 あまりの疲労ぶりにアルコールも早く回る。 仕事でもこんなに疲れた事久しくなかった。 「お疲れ様でした。新藤先輩」 隣に座っていたのは、今年入った新入社員の………。 「榎本です。榎本優羽です」 程よく酒も回り、俺はそのやたらちっこくて女子みたいな可愛い顔立ちをした後輩を初めてまじまじとよく眺めてみた。 拳くらいの白く小さな顔の中に、存在感誇張する大きな瞳。 少女漫画ばりの長くてカールした睫毛。 通った鼻筋に、グロスでも塗ったかのような桃色の艶やかな唇。 あれだ。 俺はとうとう妖精を発見した。 「やだな、先輩。人間ですよ、れっきとした人間の男です」 笑うとくしゃっと顔が緩んで、ますます女の子にしか見えなくなるその新入社員は、青い梅の入ったグラスを傾けて、中の液体を飲み干した。 小さな喉仏が液体を飲み込むたびに上下に動く様が、なんだかやけに卑猥に見えた。 「……榎本くんだっけ~?俺さぁ……、男でも、君とだったらエッチできるかも。あ、酔っ払い限定で」 「な…………ッ!!!!!」 耳朶まで赤く染め上がる榎本くん。 「冗談だよ、ジョーダン。そんな可愛い顔してさ、ちゃんと立派なもんついてんでしょ~?ムリムリ。俺はぜーったい無理だわ~。やっぱ触るならやわらか~い凹凸のある身体じゃないとね~」 丸みの帯びた身体を触るように掌動かせば、榎本は若干引き気味に苦笑いを浮かべる。 「そうですか?僕は、先輩は男の人もイケるもんだと思ってました」 「…………なんでよ」 不意に榎本の表情から妖精が消えた。 榎本は俺の口元に自分の唇を寄せて、大きな瞳を静かに細め、そしてそっとこう呟いたんだ。 「ずっと聞きたかったんです。貴方から、なんで桐原主任の煙草の匂いがするんですか?」
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