毒はいつしか蜜の味

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ぼんやりと重い瞼を細く開けると、俺の全体重を支えたまま迷惑してるのか、困惑しているのか、全く掴めない相変わらずの不機嫌そうな表情で俺を見下ろしている鬼上司。 「心配して見に来てみればこのザマかよ……」 俺の真上で溜息吐き出し、呆れたように眉尻下げて呟いた。 その言葉一つに、俺の心はいちいち騒つく。 心配?アンタが? ……もうさ、そういう柄にもないことやめよーよ…。 ホントアンタ、見れば見るほど超美人。 顔の輪郭も、肌のキメも、全てが西洋の彫刻見てるみたいで、あっという間に時間が立つ。 触れてみたい。 その黒い艶髪に。 その長い睫毛に。 その綺麗な唇に。 「………新藤?」 無意識に伸ばしていた俺の手を遮るように掴んで、主任は俺の顔を覗き込む。 「大丈夫かよ…、お前……」 いつもは蔑むか憐れむかどちらかの色しか表さない上司の瞳が、本気で心配しているらしく、俺だけを映して淡く揺れた。 「……、アンタさ……。……なんでそんな綺麗なの」 思考無視して紡がれる言葉。 「あ?」 俺の手首を掴んだまま、怪訝そうに聞き返してくる。 「もうさぁ~……、俺、女の子が好きなの。間違ってもアンタみてーな超絶性格悪い上司なんてお断りなのよ」 「何が言いてェんだよ、てめェ…」 眉間に皺を寄せる表情も、様になる。 ぐわんと、脳が渦巻いた。 「だからさぁ……。俺の心に入ってくんじゃねーよって言ってんの!クソ上司……!」 言葉を放ったその瞬間。 視界が急激に反転し、俺は意識を失った。
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