綺麗な薔薇には棘がある

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「………だからさ~、大丈夫だって~、あやちゃん。ちゃんとエスコートするよ?俺紳士だし?…………ッて!!!!」 突然の後頭部への鈍痛に持っていた携帯を思わず落としかけて慌てて振り返る。 そこには、俺を攻撃した凶器と思われる分厚ーい資料を手にした長身の男が蔑む如く俺を見下ろし、立っていた。 「な、殴った!?これで!? なんつー暴力鬼上司ッ!!!!」 鈍い痛みが後からジワジワやってきて、思わず涙目になりながら俺は後頭部を押さえて相手を睨み上げる。 「あ? てめェ、新人の癖に仕事もしねェでナンパとは、いい度胸だなァ…?」 その男の恐ろしく低い声と、震えるほどの鋭い眼孔は俺のいる営業部のデスクを肉屋の冷凍庫並に一瞬にして凍結させ、俺は自分のチキンな心臓が喉から飛び出さないように、音を立てて生唾を飲み込んだ。 「あ……いや……、これは……その……。営業の一環というか、なんというか……」 相手の迫力に負けじと言い訳考えるも、言葉が喉を滑って見事に床にパラパラ零れ落ちる。 「………なるほど」 薄気味悪くデスクに響く低い声。 いつもは鬼に隠れてネトゲかグラビア探す他同期達が火の粉が己に掛からぬように静かにオーラを消して外回りの準備をし出したのを俺は見逃さなかった。 お前ら……!二度と合コンしてやんねーからな!!
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