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「おはよ~、ユキちゃん。髪型変えた? えりちゃーん、そのネイル超いいじゃーん」
女のコってやっぱり素晴らしい。
髪の毛も、肌も、声までも全部が柔らかい。
独特の甘い匂いはどんな媚薬よりも俺の身体を溶かしてくれる。
白くて、甘くて、柔らかくて。
スイーツ。
そう。俺にとって女のコは心も身体も癒してくれるスイーツなんだよね。
「あやちゃん!」
朝の出勤の雑踏の中、一際輝く桃色のオーラ放った俺のマドンナを発見した。
「新藤くん」
「あやちゃんこないだはホントごめんねー。すっかり鬼上司につかまっちゃってさー」
桃色のマドンナは緩く巻いたセミロングの髪を形の良い耳に掻きあげながら、ふんわりと甘く微笑む。
「鬼上司って桐原主任の事?いーの?そんな事言っちゃって」
あーーー、可愛いなぁ。俺が欲しいのはこの洋菓子感なんだよね。
彼女の細い肩を抱き寄せて首筋擽る柔らかい巻き髪を指でなぞれば、まんざらでも無さそうに瞳細める相手の耳朶に唇を近づける。
「いーのいーの。ホントの
事だもん。それよりさ、今日の夜………」
「誰が鬼だ。クソ餓鬼」
「ーーーーーーッ!!!」
背後から響く鬼の声。
「は、はよざいまーす……」
オフィスが一気に色めき立つのも面白くない。
隣のあやちゃんですら桃色が2割り増しになっちゃうくらい、桐原の色香はとんでもない存在感を放ちまくる。
幾らすんのか見当もつかないほどの上質なスーツを身に纏い、颯爽とフロントを横切るその姿は女だけじゃなく、男も思わず振り返る。
「あーーー、くそ。………負けたくねー………」
俺の心に小さな燻り残すのは、男としてのプライドのせいだと言い聞かせ、俺は奴の背中を追って、走り出した。
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