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「……ん? ここは……」
響が意識を取り戻して目を開けたとき、視界に入ってきたのは見知らぬ天井だった。
どう見ても単なる丸太を適当に切って組み合わせただけのものである。継ぎはぎも多く、これは雨が振ると下手をすると雨漏りするレベルだろう。
何かしら違和感を感じつつ寝ていたベッドを確認すると異様に硬く、普段寝ている極上の柔らかいベッドとは雲泥の差だ。
薄い布が数枚敷かれているだけで殆ど板の上で寝ている形であり、クッション性というものは全く無い代物である。
「ふぅ……ってて」
起き上がると身体の節々に痛みが走った。これは単に硬い場所で寝ていたからであろう。
そして周囲を確認すると、小さく簡素テーブルが一つ、それ以外には本当に何も無い殺風景な、薄暗い六畳くらいの部屋だった。
「一体どこなんだろう」
ふと、窓らしきものがあるのに気がついた響は、ベッドから降りて側まで歩いた。
ガラスではなく、単に木で出来た小さなドアのようなもので、所々穴が開いている。ここから外の光が入って室内を照らしているらしい。
思いきって開けると、眼下にはどことなく中世ヨーロッパを思い出すような町並みが目に飛び込んできた。
「え? えええっ?!」
絶対日本ではない。
いや。もしかすると、どこかのテーマパークなのかもしれないが、まず普段目にするようなものではない。
しかも通りを歩く人たちの殆どが麻で出来た服を着ている。
中には木綿のような服を着ている人もいるが、色合いも原色だし、何やら羽のついた高級そうな帽子、そして日傘っぽいものを持っている。
どう見ても貴族っぽい雰囲気だ。
「一体ここはどこなんだ……?」
そして改めて室内を見渡し、そしてふと気がつく。
先ほど違和感を感じた正体に。
天井に電球がない事に。
今時どんな場所だって、山奥のロッジですら電灯くらいはある。
電気の通っていない場所など、そうそうないだろう。
ましてや万が一ここがテーマパークだとしたら、まず間違いなく電気は通っているはずだ。
「ということは、ここは日本ではない?」
全くあの馬鹿姉め。一体僕に何をしたんだよ!
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