プロローグ

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 ラフィルアは響の従姉であり、響より三つ年上の二十歳だ。  性格的に少々難ありだが、非常に活発で明るく小さい頃は本当の姉のように妹の椎子と一緒によく遊んで、と言うより手下にされた。  しかしラフィルアが高校に入った頃から徐々に疎遠となってしまった。更に彼女が高校二年生の時、小説家としてデビューを果たした。  そして高校を卒業してからここの敷地内の別棟に引きこもり、ずっと小説を書く生活を続けている。  その為、ここ暫く姿を見ていない。  彼女の両親である叔父は日本人だが、叔母は確かアメリカ人と聞いている。その血を引き継いだラフィルアは、金色の長い髪に珍しい赤い目をしていて、ハーフとは思えないほど日本人離れした外見を持っていた。  とにかく神秘的で美しいのだ。響も小さい頃、密かに恋心を持ったものだ。 「はぁーー、しかしお爺様も何考えているんだか。よりにもよって従姉が許婚なんて」 「従姉同士はご結婚可能ですが」 「知っているよ」  霧谷家は意外と名を知られている。そして分家とはいえ、そこの娘が小説家としてデビューしたのだ。一時期は雑誌などでもしょっちゅう紹介されていた。  更にラフィルアの外見は美少女であり、ファンレターも山のように届いたらしい。  しかし祖父である霧谷真一はそれを宜しくないと考えており、しょっちゅうラフィルアと喧嘩をしていたと、妹の椎子から聞いた。  今回の許婚の件もその辺りが絡んでいるんだろうな、と響は推測した。 「まあいいや。学校が終わったあとでラフィルア姉さんのところへ相談しにいくよ」 「早速会いに行くのですか?」 「うん。姉さんとどうやってお爺様を説得するか相談しに行ってくる」  ボタンを閉め終わった響は、制服の上着に袖を通しながら女中へそう伝える。  響の通っている霧谷高校は霧谷コンツェルンが経営している高校だ、この高校の制服は有名デザイナーに受注させ作らせたものである。  女生徒の服は黒をベースにしたゴシック風の上着に、白いシャツ、その胸元には赤色の大きなリボンが飾られており、そして赤黒のチェック模様のスカート、黒いニーソックス、更に腰にも大きなリボンが付けられており、制服というよりゴスロリに近い服装だ。  しかし男子生徒はまるで大正時代の軍服のような服装である。
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