プロローグ

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「ってそうだ、響と遊んでいる場合じゃないんだ」 「僕、遊ばれてたの?!」 「だって久しぶりだし。二年くらいまともに会ってないんじゃないかな」 「うん、それくらいかも」  特にラフィルアが高校を卒業し、この部屋に入ってから殆ど顔を合わせていない。 「で、あたしからも響に一つ頼みたい事があるのよ」  その言葉を聞いて響は少し不安になった。  昔なら、頼みたいことがあれば何も言わず強制的にやらされていたからだ。それをわざわざ説明してくるとは、何かがある。  ラフィルアも既に二十歳、成人しているし多少は大人になった、と一瞬だけ頭を過ぎったが、先ほどの行動を見る限りとてもそうは思えない事に気づいた。  しかし、響のほうも許婚の件でラフィルアにも断るよう頼みに着た手前、彼女の頼みごとは断りにくい。 「うん、いいよ」  いいよ。  その返事をしてしまった響は、これから酷く後悔する事になる。 「響、言ったわね。もう取り消しは不可能よ。テリウス、契約成立よ」  ラフィルアがテリウス……熊の人形に乗り移った悪魔の名を口に出す。  すると箪笥の上にいた人形が淡く光だし、そしてぴょんとちゃぶ台の上へと、無駄に華麗に飛び降りた。 「え? え? なに?」 「坊主、悪いな。我が主との契約により汝、霧谷響を転移する」  びしっと短い腕を響へと向けた途端、響の足元、畳の上に妖しく光る丸い輪が、そしてその中に三角形が二つ、所謂六芒星が浮かび上がった。 「ちゃんと後で説明するから、ごめんね」 「ね、姉さん何を?!」  嫌な予感がした響は慌ててその場から動こうとするが、足が何かに固定されたかのように動かす事が出来ない。  その響の目の前でラフィルアがローブの中から紙を束ねたものを取り出した。  そしてその紙の束を響の足元に置く。 「いいわよテリウス」  ラフィルアがテリウスを促す。熊の人形をが短い腕を必死で複雑に交差させながら、呪を紡ぐ。 <古き魔の血を受け継ぐものよ、戯曲を描かせ伝えよ、我テリウスにより汝に与えん>  完成と同時に眩いばかりの光があふれ出し、そして響を飲み込んでいく。 「な、何これ?! 特撮?! 手品?!」 「響、行ってらっしゃい。あたしの為に楽しい物語を紡いでね」  ラフィルアの言葉を最後に、響の意識が薄れ、そして完全に落ちた。
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