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僕は目をこらして探した
顔も名前も知らない人を…
余りにキョロキョロし過ぎて
気持ち悪い…フラフラする…
何時だ…時計は無いのか…
「すみません…いま何時ですか…?」
通りすがりの人に聞いた
「えーと、11時25分になるとこかな…」
「ありがとうございました…」
もういないか…でも僕を待ってるかも…
最後まで諦めないぞ…
それにしても人が多いな…みんな遊びか…?仕事か…?
仕事で外国に行けるなんていいな…
僕なんて契約社員だから国内の出張さえ無い…
でも高卒の僕には入社なんてまぐれのような大企業だから
嫌な仕事も無難にこなしてさえいれば
安定した生活が保障されていた
昨日までは…
そうだ…13時までに戻らないと
その生活が無くなる
あれっ、もうひとりの契約社員って誰だっけ…
余計な事考えてる場合じゃなかった…
何時だ…
あっ、11時40分だ…
もうだめだ…
その時
「ロンドン行きの飛行機20分遅れだってね…」
どっかの添乗員みたいな男たちが話してた
20分遅れ…でもみんな搭乗したんだろうな…
会社に戻ろう…
スマホのデータは痛手だけど
リストラはもっと痛手だ…
いまから帰ればぎりぎり間に合うな…
そうだ電話しとこう
「お疲れ様です…管理課の鈴木です…
はい…すみませんもうすぐ戻ります…
あの…僕の隣の人をお願いしたいんですけど…
マモルくん…?あの名前はちょっと…
眼鏡をかけた背の高い人です…あぁマモルくんですか…
お願いします…」
『もしもし…鈴木くん、ちょうど良かった…
さっきの女の人からまた連絡が来てね
連絡先聞いたから…何か知り合いに伝言頼んだからって
090-xxxx-xxxx岩田さんだって…
12時半頃まで空港にいるみたいだよ
あっ、他の電話が入ったから切るね…』
「ありがとうございました…助かりました」
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