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春。
ドアを開くと、心地いい風が淡いピンクに染まった桜の花びらを舞い上がらせ、私の頬をそっと撫でた。
この間までの冬の寒さはどこへ行ったのか、ぬくぬくと暖かい。
私は誰もいない部屋の方に振り返って1人、「行ってきます」と呟いて家を後にした。
今日は『嵐野学園』の入学式。
小さい頃から憧れていた先輩が通っている学園。
真新しい制服を着た私は、誘導係の先輩方に従いながら受付を済ませて講堂に向かっていた。
『今日から嵐野学園の生徒』
その言葉のフレーズが頭の中で繰り返される度に気分が弾む。
『どんな生活が待っているんだろう?』
『部活には入ろうかな?』
『友達できるかな?』
『好きな人も出来たりするのかな?』
色んな期待、不安を抱えて、待ちに待った生活に足を踏み入れる。
しかし、
この時の私は予想すらしていなかったのだ。
登校初日から、あんな出来事が起こるなんて。
『執行部に入ってくれないかな』
この言葉を聞いた直後から、
私の理想の学園ライフから大きく逸れてしまうなんて。
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