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来たんですよ」
「さっき安本の病院と言ってませんでしたっけ?」
「そうでしたか? まぁ、安本さんが話ができない状態なら、貴女に話をしておこうと思ったんですよ」
と言った男に、どうやっても別れることはできそうになかった。
「は? 安本に雇われた探偵?」
立ち話もなんだからと男は、病院近くの喫茶店で向かい合うように座っていた。九十九(ツクモ)と名乗った男は話した。
「探偵というか、何でも屋というべきでしょうか。私は安本さんに、新しく買った家について調べてほしいと頼まれていたんですよ。もしかしたら自分の家に不審者がいるかもしれないから調べてほしいとね」
「それで、私に何が用なんですか? 安本の家には不審者が居たんですか?」
「ここ数日、調べてみましたが、不審者は発見できませんでした。安本さんが、あんな事故にあってしまったでしょう?」
だから、安本さんの人間関係ではなく、家を調べてみようと思うんですと、九十九は言った。
「家って、その言い方だと、その家、自体に問題がありそうな言い方じゃないですか」
と冗談半分で言ってみたけれど、九十九はコクリと頷いた。
「冗談ではなく、そうみたいなんですよ、安本さんが買ったその家ですけどね。何度も転売がくりかえされているんですが、その理由のほとんどが、家主の不慮の事故や、事件だったんです」
アメリカにあるという、増改築を繰り返した屋敷じゃありませんけどねと、九十九は肩をすくめた。
「あの言っておきますけど、私には霊感や霊能力なんてありませんけど」
「もちろん、私にもありませんよ。ただ、家を調べるには、私だけじゃダメなんですよ。だから、知人の貴女に立会人になってほしいと頼みに来ました」
事故にあった安本さんのためにも、協力してくれませんかと、九十九は言う。断れそうになさそうだ。それに私も安本の買った家に興味があった。
「よろしくお願いしますね」
と愛想笑いをうかべる、九十九に適当に返事をした。
善は急げということで、喫茶店の会計をさっさと九十九はすませて、安本の家に向かった。
「どこにでもありそうな普通の家」
何人も不幸な事故が起こった家だから、妙にボロだったり、不吉な雰囲気の家だと思っていたが見た目だけはどこにでもある普通の家だった。まぁ、隣にいる、この男が不吉だからかもしれない。不幸な事件に、不吉な男とは出来すぎた物語かもしれない。
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