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パラパラとページをめくりながら九十九がフムと頷いた。私も隣から覗き込んでみたけれど、ところどころページが破かれていて、どこもかしこも同じように、鉛筆で真っ黒になるまで書き込んであったが、かろうじて読める場所があった。
『来る、来る、来る。アイツが、そこまで来ている。あの日本刀を持った女が……』
『殺される。今すぐ、俺は殺される。部屋が、家が、どこまでも広がっていく。どうして、俺は×××から、こんな家を買ったんだ?』
『誰も相談にのってくれない。俺の妄言と笑うだけ、俺はこんなに苦しんでいるのに、気づいてくれない』
『女は、仮音(カオン)と、名乗った。女が何者なのか、わからない。ただ、呪いを斬りに来たと言った』
『この家は呪われているのかもしれない。最近、そう思えるようになってきた』
『呪いを斬るのなら、さっさと斬ってほしい。なのに、彼女はいつまでたっても斬ってくれない』
『呪いを斬るには、その経緯を語らなければならないが、俺には語るべきことがない』
「ほぅ? 呪いですか」
日記をめくっていた、九十九が興味深げに呟いた。
「何か心当たりがあるの?」
「ええ、都市伝説みたいなものなんですけどね。曰く付きな話の背後には、日本刀を持った少女が暗躍しているという噂があるんですよ」
曰く付きな事件の背後に暗躍する少女、数多くな犠牲と共に、この世から事件から抹消していく。
「わかりやすく言えば、掃除屋みたいなものでしょうね。噂話やニュースが一定の時期を越えると、誰もが気にかけることをやめてしまうでしょう? もしかしたら、この日本刀の少女が暗躍しているのかもしれませんね」
九十九が言うが、私は、そこよりも気になる場所があった。
「でも、その日本刀の少女、仮音がどんな子だったとしても、家を売ったの相手は別にいるみたいじゃない?」
九十九からノートを奪い取り、私はページをめくり、
「この伏せ字、×××のところ、これは安本が誰かから何かを買い取った相手の名前だと見えない?」
私は伏せ字を人差し指をトントンと指差して、九十九に聞いた。
「ここの伏せ字の部分の名前の人物は、この家のことも知っていたはずじゃない?」
この断片的な言葉を見ていると、安本はこの家で起こった、事件や事故を知らなかったように見えるし、もしかしたら知っていたが結びつけられなかったかもしれないが、もうどっちにしろ手遅れだ。
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