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安本は事故にあい、会話できる状態じゃなくなった。この家に問題があったのなら、詳しい事件などの経緯を聞けると思ったのに……。
「って、貴方、なにしてるの?」
「いえ、この本棚だけ妙に整理整頓されているなと思って、それにここだけ、出っ張ってませんか?」
「その本だけサイズが大きいんじゃない?」
日記の閉じつつ、本棚を覗き込んだ。上から下までギッシリと詰められた本棚、若本って読書家だったか? と思っていると九十九は、本棚から、バラバラと本を床に落として、空になった本棚の隙間を覗き込んだ。
「特に何かあるわけじゃありません……ん? おや? スイッチ?」
本棚の隙間に腕を突っ込んで、カチリと押すと同時だった。本棚の隣の壁がひとりでに開いた。
「か、隠し扉?」
「どうやら、本命はこの先にありそうですね」
ほんとにアメリカにある、幽霊屋敷みたいだと九十九が言う。こんな時に冗談を言わないでほしい。隠し扉から中に入っていく。中は薄暗い。九十九が壁を手を探り、蛍光灯のスイッチを押した。
「…………え?」
「ほう」
その部屋の壁は真っ赤に染められていたて、まるでこの場所で大量の人が殺されていそうな部屋に、
「貴女の写真ですね」
壁一面にたくさんの、私、安室浪江の写真が貼り付けてあった。学生時代から、つい最近の私の写真が壁一面にはりつけてあった。
「なに、これ? どうして、私の写真が?」
後ずさりした。ここに人の死体や、もっと別の物があると思っていたから不意打ちだった。予想外のショッキングな事実に私は頭を抱えた。
「長年の片思いというには、あまりにも過剰というか、狂気に満ちてますね」
九十九が部屋の中を見て回りながら、彼は言った。中央に置かれたテーブルに、日記や写真をファイルが乱雑に積まれていた。
「おそらく、安本さんにとって、この隠し部屋と寝室だけが、自分の家だったみたいですね。貴女という片思いの女性に囲まれていることがね」
「嘘でしょ? だって安本は、私の友人で……」
「貴女にとっては友人でも、彼にとってはそうではなかったということでしょうね。貴女にその気がないとわかっているからなお、強く燃え盛った」
私の写真が壁一面に貼り付けてある部屋の真ん中で、九十九がニヤリと笑った。
「彼が異常に家に帰りたがった理由も、これでしょう。他人に見つかってしまってはならない。そうなってしまったら」
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