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どうにかタクシーに乗れたことには
ほっと息をついたのも束の間、
次の瞬間不安になった。
運転手が高齢で、
行き先を何度いっても
理解してもらえない。
せめてナビが付いてるならまだしも、
ナビもなし。
しかも、
今度はエアコンがきき過ぎてて、
ぐっしょりと湿ったシャツが
凍りそうなほど寒い。
タクシーはその後、案の定迷走し、
途中で降りることを提案したが、
聞こえてないのか、
聞こえないふりなのか
降ろしてもらえず、
結局十五分で着くところが
一時間かかった。
それでもどうにか会社に着き、
タクシーを降りようと財布を開けると
……千円札が一枚。
……た、足りない。
カードは……使えない。
すぐ隣は銀行なので
おろしてくるという俺と、
無銭乗車かという運転手とで
押し問答になった。
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