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「おばちゃんからのサービスだよ。お兄ちゃん、そのお嬢ちゃんが心配で食べてなかっただろ?」
「は、はい」
昂揮さん、戸惑いながら返事をします。
「のびた蕎麦じゃなくて、本当に美味しいお蕎麦を食べてもらいたいからね。こんなに優しいいい男にはね」
おかみさん、私にウインクします。
「悪いけど話を聞かせてもらったよ。あんた立派だ!このお嬢ちゃんの体調を第一に考えてあげて、ささえてあげようっていう気が私にまで伝わってきた。若いのにたいしたもんだよ」
ポンポンと、昂揮さんの肩をたたきます。
「お嬢ちゃん、大切にしておあげ」
おかみさん、私を温かい眼差しで優しく見つめます。
そして、おかみさん。私の方に来て、
「お嬢ちゃん、つらいかもしれないけど、がんばりなよ」
コソッと耳元で囁いてくれます。
私は頬を染めて黙って頷きます。
「お嬢ちゃんはもう、それだけでいいかい?」
「えっ?は、は」
クゥ~。
急にお腹の音が鳴ります。
・・・・・。
・・・・・。
私は真っ赤になって顔をうつむきます。
そうでした。
朝、体調が悪かったから、何も食べてませんでした。
はぅぅぅっ・・・。
恥ずかしいですっ・・・。
「ハハハッ!お嬢ちゃんのお腹は、欲しがってるみたいだね。よしっ!もう一杯、サービスしようかね」
豪快な笑い声とと共に、おかみさんは厨房に戻って行こうとします。
「あ、ちょっと待ってください」
私はおかみさんを呼び止めます。
「あ、あのぅ。いけません、そんな、悪いです」
私は慌てて遠慮の言葉を言うと、
「気にしなくていいよ。これは、おばちゃんが勝手にしてるんだから。それとも、お蕎麦、美味しくなかったかい?」
「そ、そんな事ありませんっ!すごく美味しいです!」
その一言をおかみさんは聞くと、パァっと笑顔になります。
「そうだろ、そうだろ。うちの旦那がつくるお蕎麦は日本一だからね。遠慮なくお食べ」
おかみさん、上機嫌で厨房に戻ります。
「あんた、ゴボウ蕎麦、特別につくってあげて、あと、自然薯をすりおろしたのも、あとごはんもひとつ」
えっ?
そんなに?
「お嬢ちゃん、女の子の日には、身体を温まるものを食べないと。根菜や、色の濃いものを食べて、元気な赤ちゃん産まないとねぇ~」
「はうっ!!!」
瞬間、私は真っ赤になります!
あ、あ、あ、あ、赤、赤、赤赤ちゃんなんて!
まだ、キス、は、しましたけど、けど!
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