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「いや!」
私は叫び、後ずさります。
恐怖で身体が固まります。
私は、もう一度、その遺体を見ます。
香織さんではありませんでした。
私はさっきの想像を振り払うかのように、ブンブンと頭を振ります。
少し、息をととのえ、バスを見つめます。
警察とSATは?
また、遠巻きにしているだけです。
突然、バスの中から身を乗り出して、自動小銃を警官隊に向け乱射しましたっ!
しかし、警官隊、シールドを集めて、その銃撃に対処します。
周りの警察官たちは、野次馬を追い払うように、避難させてます。
私の方にも、避難するように言ってきました。
でも。
私はそこを動きたくなかったので、一歩ずつ、後ずさりします。
すると。
バスが動き出しました!
私は背筋が凍りついたように、バスを見つめます。
香織さん。
もしかしたら会えないかも?
そんな悲しい結末を想像してしまいました。
警官隊がバリケードを開け、犯人たちの要求にこたえようとして、包囲をときます。
このままじゃ香織さんがっ!!
ふと。
香織さんとの思い出が浮かびました。
昂揮さんのマンションで最初に出会った事。
器械体操で、頑張った日々の事。
そして、明日のバースデーケーキの事。
私の脳裏に。
テロリストたちが、人質を殺害する場面が浮かび上がります。
もし、あのテロリストたちが、無事逃げ出される手筈を整えていたら?
まず、間違いなく、自分たちの顔を覚えられている人質を殺害するでしょう。
そのような最悪の状況を想像してしまいました。
じゃあ、香織さんはっ!
殺されるの?
いやだ!
そんなの、絶対にイヤッ!
私は、夢遊病者のように、香織さんの名前を呟き続けます。
・・・。
・・・。
・・・。
・・・。
めぐみさん。
光次お父さん。
私は。
約束を破ります。
最初で最後でいいですからッ!
神様!
許してくださいッ!
・・・・・・・。
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