おぼえていますか?

6/48
前へ
/139ページ
次へ
「やっぱり、私は、ここにはいてはいけない人間だったんです」 私は溢れてくる涙をこらえきれることができずに、ポロポロと泣き出してしまいます。 「私は、生まれてきてはいけなかったんです。私は、私は・・・」 子供のように、私は泣きました。 全てを忘れるように。 いえ。 このまま、消えてなくなりたいと、思いました。 でも。 「結愛!」 香織さんの力強い声で、私は顔を上げます。 「私、結愛のこと、生まれてきちゃいけないなんて思ってないよ!」 「え?」 「わたし、結愛と出会って、よかったって思ってるもん!だって、結愛が、いなかったら、部活も楽しめなかっただろうし、結愛が勉強を教えてくれなかったら、また、赤点取ってたと思うし、それに・・・」 「それに?」 「結愛がいてくれたから、私、いじめらなくなって、嫌がらせも受けなくなったんだから!」 言った後、香織さんは涙を流しました。 「結愛が、先輩たちに言い返して、自分が犠牲になってくれたから、私に対するいじめもなくなったから。結愛が危険をおかして、バスに乗り込んで助けてくれなかったら今、こうしてここにいないかもしれないから・・」 「香織さん・・・」 「結愛、本当にありがとう。結愛は、命の恩人よ」 言い終わった後、香織さんは、私を優しく抱き締めてくれました。 お日様のような、いつもの優しい香りです。 香織さんも泣いてくれてます。 その香織さんに、私は身体を埋めました。 そして、少したってから、香織さんは私から離れます。 「それに結愛、秋人と百合花にすごく好かれてるよ。明日、頑張って母さんのバースデーケーキ店長さんと、一緒に作ってくれなきゃ!」 香織さんは、私の手を包むようにして両手で握ってくれました。 優しい眼差しで、私を見てくれてます。 でも、私は、その眼差しを受けるのがすごく辛くて、うつむいてしまいました。 「ほら、結愛!元気だしてよ!いつもの結愛らしくないよ!器械体操で、インターハイで三位を取ったぐらいのすごい選手なんだから!」 「私は、それを、ズルしてるんです・・・」 「あ・・・・」 私が、そう呟いた後、香織さん、しまったという顔をしました。 そうです。 私は、普通の、女子高校生ではないんです。 「だから、私、それをしたから、他の選手さん達に悪いから・・・」
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加