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私が、いなかったら。
四位の選手さんは、三位になれたんです。
それは、八重桜高校の器械体操部の部員さん達にも関係します。
私がいなければ、レギュラーのままでいれた先輩がいます。
その先輩は。
私と快く、レギュラーを交代してくれました。
『結愛ちゃんの方がとても上手だから、みんなのためにガンバ!』
って、励ましてくれました。
この時。
とても、胸が痛かったです・・・。
「私は、人とは違う能力を持ってるんですよ・・・。ズルをしてるんです!許されません!」
自分を責めるように、私は叫びました。
香織さん、何も言えずに私を悲しい目で見ています。
「でも、結愛。結愛は、インターハイ三位になったけど、ドイツで行う世界選手権の日本代表を断ったじゃないか」
昂揮さんが、悲しむ私を、慰めるように、諭してくれます。
そうです。
私は、パティシエールになるのが夢なので、ドイツの世界選手権の日本代表を四位の選手に譲ったんです。
勿論。罪悪感もあったからですが・・・。
「そうよ!結愛、断ったじゃない!」
香織さんが思い出したかのように、嬉しそうに声をあげました。
「結愛、これから器械体操辞めて、パティシエール一本に絞りなよ!そりゃ、私、結愛と器械体操できないの悲しいけど・・・・結愛が苦しむなら、器械体操辞めよ!私が無理に誘ったんだし、結愛と学校行けるなら、私、我慢する!」
「香織さん・・」
香織さんは、せつなそうな笑顔で、私を見つめます。
多分。
本当は、私と器械体操をやりたいのを我慢してるのだと思います。
私は、それを見て、すごく胸が痛くなりました。
「で、でも・・・・やっぱり駄目です」
「だから、私に気をつかわなくてなくていいから!」
「そうじゃ、そうじゃないんです」
力のない、弱々しい声で言います。
「そうじゃないって、どういうこと?」
香織さんが、聞き返します。
「私の正体が、もう、香織さんと昂揮さんにバレてしまってるので、もう、日本にはいられないんですよ香織さん」
二人はこの一言で、行き止まり感を感じ、うなだれたように、顔を伏せます。
「だから、もう、昂揮さんと香織さんとはお別れです・・・・・グスッ!」
私は、また、涙が溢れだして、両手で顔を覆い、泣き出しました。
もう。
どうすることもできないから!
みんなと別れなきゃならないからっ!
ただ、ひたすら、泣いています。
すると。
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