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「結愛が、目覚めた時、結愛に拘束衣を着せていたのは、間違ってすごい力を持つ身体で万が一暴れられたら、手がつけられないし、結愛を再度拘束するときに傷つけてしまいかねないからやむを得ずとった処置なんだ。間違っても、結愛を実験体として扱ってはいないからだと、昔、言っただろう」
結愛を優しい目で見つめるめぐみ姉ちゃん。
結愛は、静かにめぐみ姉ちゃんを見てる。
「結愛。パリにいるとき、二人でその身体に慣れるために、一緒に一生懸命リハビリしただろう?」
優しく、めぐみ姉ちゃんは結愛をたしなめる。
「確かに、結愛が他の女の子より身体能力が優れてるのは確かだが、結愛は、そのバケモノじみた身体能力を使いこなせていないだろう?」
「は、はい。でも、それでも私の身体は人とは違うから・・・」
「馬鹿っ!」
めぐみ姉ちゃんが突然怒鳴り、結愛はそれにビクッと怯える。
「確かに違うかもしれないが、だけど、その身体を動かしてるのは結愛だろう!」
「え、私・・・」
「ああ!慣れない身体で、パリにいたとき、すごく苦しい思いをして、生活できるようになったのは、結愛が頑張ったからだろう?」
結愛、黙ってうつむく。
くすんと、鼻をすする音も聞こえる。
「キャット空中3回転も、一緒に練習しだろう?」
え?
まさか、ホントに練習してたの?
「まあ、結愛、回転しすぎて四回転か5回転もしてたけど」
それ回りすぎだろ?
「インターハイの三位だって、慣れない身体で、一生懸命練習したから取れたんだろう?違うのか?」
結愛はインターハイに出る前。
最後まで残って練習してたのはみんな知ってる。
俺も最後まで居残って結愛を助けてあげてたし。
「その練習中、結愛、完璧に演技をこなしていたか?香織、どうだった?」
「は、はい。結愛、確か、何回も失敗してたり、勢い余って壁にぶつかったりしました。でも、それでも挫けずに頑張って練習してました」
香織は、結愛の肩を抱きよせる。
「その時の結愛、普通の女の子でしたよ。一生懸命、ひたむきに練習してる、素敵な女の子だったよ、結愛」
結愛の正面に移動し、覗き込むようにして、結愛を元気付ける香織。
俺は、目に光る何かを見つけた。
「結愛、あのインターハイ三位は、お前が努力して取った、最高の結果だろう。間違っても、ズルなんかしていない」
「めぐみさん・・・」
結愛、泣き顔でめぐみ姉ちゃんを見つめる。
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