山に散る花火

74/90
1631人が本棚に入れています
本棚に追加
/725ページ
「え?」 聞き間違えかと耳を疑った。 恨まれて当然の自分の名を最愛の人として彼女が口にするとは思えなかったからだ。 「でも、迷惑だよね。徳善には好きな人がいるから……。あの時、強がっちゃったけど伝えれば良かった。この思いを。そうすれば、こんな事にならなかったのに……。会いたい、会いたいよ徳善!!」 徳善の頭に映像が流れ込んで来る。 薬をもらった日。失恋したと思った山姫は薬を飲んだ後、その悲しみで三日三晩泣き続けた。 その間、薬は飲んでいなかった。 不安定な彼女の精神状態がたった一度、服薬しただけの薬の副作用で本能に飲まれるのは必然だったのかもしれない。
/725ページ

最初のコメントを投稿しよう!