山に散る花火

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「は早く徳善さんを追わないと……」 我に返るなり景壱は闇雲に走り出す。 「どうしたの。何か分かったの?」 「さっきの粉末は体内の妖気を散らす薬なんです。それを自分で飲んで、その血を山姫に吸わせて彼女の妖気を散らそうとしてるんです!」 そんな事をすれば力を失いかけてる徳善は無事で済まないどころか死んでしまうだろう。 「妖気を散らす? そんな事して」 「そうすれば山姫が一時的にでも元に戻る可能性は有るんです」 彼はずっと彼女を戻す方法を探していたのだ。 彼女が人を殺す様子を見て嘆き悲しみながらも、元の天真爛漫な彼女を取り戻す為に、その方法を探していたのだ。 その思いが先ほどの粉末に詰まっていたのである。
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