山に散る花火

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「俺も妖怪に誰かを襲われていたらどうなっていたんだろう。妖怪を憎んでいたのかな。君とも出会わなかったのかな」 送り狼の背に揺られ、景壱は思わず口を開く。 「……そうかもしれません。でも、そんな事は考えないで下さい。景壱さんが妖怪を好きでいてくれたから私を含め、沢山の人が救われたんですから」 寂しげに言う彼の頭を「ごめん」と撫でながら、そう考える方が失礼なのかもしれないなと景壱は考える。 その人の気持ちになろうと自分を置き換えた所で相手の気持ちを知ること等出来ないからである。 やはり、その痛みを知らなければ全てを理解する事など出来ないのだろうと。
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