山に散る花火

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「近いです。前方に景壱さんの体からする薬と同じ匂いの妖が居ます。ん? 人間の女性の匂いもしたんですけど気のせいだったのかな?」 それを聞いて景壱は大丈夫なのだろうかと思う。 恐らく、彼女は徳善を見つけ、その後を追って来たのだろう。 馬鹿な真似はしないと思うが彼女を止める人が近くに居ない。 嫌な予感を感じながら景壱が顔を上げると、その瞬間花の香りがする風が背後から吹く。 「み、つ、け、た」 無機質な高い声が聞こえると同時に木の幹が砕け散り、首を掴まれ高く持ち上げられた徳善の姿が確認出来た。 「徳善さん!」 「ぐ、う……。な、何故、ここに? 私が全てを終わらせる。だ、だから、逃げてくれ」
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