山に散る花火

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「嫌だ! 俺が逃げ出したら徳善さんは山姫を道連れにして死ぬ気なんでしょ? そんな事して彼女が喜びますか?」 そう言って送り狼の背から下り、景壱は駆け出した。考えが有った訳ではない。彼を助けなければいけないと思うと自然に体が動いたのだ。 そしと山姫に右手を向け、徳善から手を離すように強く念じる。 だが、やはり効果が無いようで景壱の思いは通じていないようである。 「山姫! 止めてくれ!! 徳善さんを殺したら絶対、君は後悔する。目を覚ましてくれ!!!」 景壱が叫ぶと同時に心が無い筈の山姫の目から涙が伝う。 それを見て景壱が驚愕していると徳善の背後から秋保が飛び出して来た。 「その手を離せって言ってるでしょ!」
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