山に散る花火

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その間に景壱がわざと木の枝を踏み、大きな音を立て山姫の注意を自分の方に反らす。 深呼吸をしてから徳善は目を閉じる。 「……駄目だ。見えない! 君と同じように靄が、かかった様に彼女の心が見えない……」 徳善は前に倒れ込み嘆いている様に小刻みに震える。 「諦めないで下さい。貴方だからこそ、彼女の心が読める可能性が有るんです……、うあああ!!? ゆっくりだが確実に近づいて来る山姫に景壱は腕を掴まれたのである。 その力は女性とは思えない程の握力で腕の骨が悲鳴をあげている。 「ああああ!!!」 痛みが景壱の口から止まる事の無い苦痛の叫びをあげさせる。 その瞬間秋穂は徳善の着物の襟を掴み、無理矢理立ち上がらせる。
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