山に散る花火

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すると、あれほど見ようと思っても見えなかった彼女の心が徐々に見えはじめる。 まだ、彼女に心が有った事に驚くと共に徳善はその事実を嬉しく思う。 「……たい。……いたい」 寂しげな深い青い空間の中で悲しげな声が辺りに響いている。 「会いたい。寂しい、寂しい。辛い。苦しい。会いたい、会いたい……」 山姫が会いたがっているのは人間の友達なのだろうなと徳善は思う。 「すまない……。私の所為で大事な人に会えなくさせてしまって」 徳善の声が聞こえてないのか、彼女は同じ言葉を繰り返している。 「辛い。苦しい。会いたい。最期に一度で良いから会いたい。最愛の、あの人に。徳善に」
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