「７日後に日本は消滅します」

『７日後に日本は消滅します』

ジリジリと容赦なく照りつける太陽が頭の真上にある時間。公園の日なたを避けて木陰にあるベンチに座ってサンドイッチを食べていたら、携帯電話にこんなふざけたメールが届いた。

差出人は不明。unknownになっていた。

メールを最後まで見ても怪しげなリンクなどは貼られていなかった。ただ物騒な一文があるだけ。

物騒というのは何も内容を真に受けたわけじゃない。金やワンクリックを要求するわけでもない、一方的な内容を送る人間の頭の中が物騒だと思った。

「くだらない」

そうぼやいて手早くメールを削除した。ひとり暮らし６年目ともなれば独り言が増えるってもんだ。

それにこのオフィス街のど真ん中にある公園は都会から切り離されたエアポケットのようで、ここには自分１人しかいない。まるでこの街に自分１人しかいないような気分になる。

こんなでたらめなメールを送ってまで他人と関わりたい、顔も知らない差出人をこっそり見下した。

仕事でもしていたらいいのに。

仕事はいい。やるべきことは決まっているし、関わる人間も一定。心の奥底まで入り込む必要も無い。

昼休み終了５分前になったので、僕はゴミを片付けてベンチを立った。

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翌日のお昼時、また同じようなメールが届いた。差出人はunknown。タイトル無しで文面はまた一言だけ。

『６日後に日本は消滅します』

昨日は７日後。今日は６日後。なるほど筋は通っている。僕はメールを削除した。

今朝このメールのことがニュースに取り上げられていた。このふざけたメールを受信したのは僕だけでなく、携帯電話を所有する人全て。

いま日本全国での携帯電話普及率は100%を越えている。

これは大規模なサイバーテロだ。警察によると、携帯電話会社のデータベースが何者かにハッキングされたのではということだったが、明確な漏えい元は不明だった。

イタズラにしては手間ひまがかかり過ぎるこの犯行に、本当のテロ予告かもしれないなんて意見もある。

……こういうのは国家試験を通過した警察官に任せるだけ。一般市民には関係ない。特に僕みたいな人間には余計に関係がないことだ。