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俺の名前は小波 球太、二十三歳だ。
今は神楽坂の営業部に所属していて、社会人野球部で去年の秋、全国大会で優勝を成し遂げた。栄光を掴んで評価されたのか今年のドラフトで見事一位で津々家バルカンズに入団する事が決まった。
中学、高校は故障し、大学はリハビリでドラフト指名を諦め、社会人になってようやく・・・随分遠まりになっちまったがプロ野球選手と言う夢を叶える事が出来た!
その日の俺は、会社の歓迎会を無視して足早に家へと向かった。一番先に伝えたい人が居るからだ。
俺たちの住んでいる街は頑張市と呼ばれていて、そこにデパート街と呼ばれるこの街一番とでも言っても過言ではない栄えた場所に俺と彼女であり、プロ野球球団「キャットハンズ」のリリーフエースである早川あおいと俺が大学を卒業してから一緒に住んでいる1LDKのマンションがある。
家賃は周りのマンションやアパートと比べるとちょいと高めであり、ここに住むと決めた時、俺より稼ぎのあるあおいが家賃を払うと言ったのだが、男として、また彼氏として俺が払わないと示しが付かないのと納得させて俺が払っている。
幸い、他のことに興味や関心は無かった為、お金は食費などしか使うことは無かった。
会社から電車で三十分、駅から十分と、俺は息を乱していることすら気にもとめず家へと向かった。
十階構想の新築のマンションのエントランスに入り、自分の家の番号を入力する。「十〇一」これが俺の住んでいる番号だ。
ピンポーンと、インターフォンを鳴らす。俺はそわそわしながら返事を待つ。
「・・・・・・・・・」
ん? 返事は返ってこない。うむむ。
仕方がない、もう一度!
「・・・・・・・・・」
――あれ? どうしてだ?
首を傾げて俺はネクタイを緩ませる。このままでは家に入れない。確か今日は・・・・・・あおいは延期になったキャットハンズの最終戦だ! やってしまった。あおいが家に居ると思って、こんな時に俺はカギを会社の引き出しに置いて来ちまった。
クシャクシャと黒い癖毛頭を掻き毟る。嬉しい勢いがここまでドジをやらかすと笑えてくるぜ・・・・・・。
はぁーと溜息を漏らして壁に寄り掛かるとエントランスの前に一台のタクシーが止まる。この家に住む人か? よし、この際だ・・・一緒に中へと入ろう!
そう思った時だ・・・降りてきたのはあおいだった。
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