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「おめでとう・・・球太くん」
「お疲れ様・・・あおい」
二人はゆっくりと瞳を閉じて、唇を重ねた。広い部屋に静寂が訪れる。聞こえるのは時の針の秒針・・・・・・。
カチ、カチ、カチ・・・。と何秒経ったのか分からない程、そのキスの時間は短くて永遠のように感じられた。
そっと、唇を離して俺はあおいの肩をぎゅっと・・・・・・握りしめた。
「球太・・・・・・くん?」
首を傾げて、あおいは不思議そうに言う。握りしめた肩が痛かったのだろうか。俺はごめんと軽く謝ってワザとらしい咳払いをした。
「あ、あのさ・・・前からずっと決めていた事があるんだ。俺がプロになった時、お前にずっと言おうと決めていた事が・・・・・・あおい、これを受け取って欲しい」
俺はゴソゴソと右ポケットから一つの箱を取り出した。黒い箱に白銀のリボンが巻かれている。
「――? ちょっと・・・ボク、今日誕生日じゃあないよ?」
「知ってるよ。開けてみろよ」
あおいは俺の言葉を受けてゆっくりとリボンを外して箱を開ける・・・そこには細やかなチェック柄が斜めに入ったテクスチャー使用のリングであり、表面はキラキラと輝きを放っていた。
「これ・・・・・・って」
「ああ、指輪だ」
「見れば分かるよ! でも・・・なんで?」
「それを受け取って欲しい・・・受け取ってこれから俺の側で・・・ずっと側にいて欲しいんだ。だから俺と結婚してくれないか? あおい」
結婚してくれ、つまりプロポーズだ。ずっと思っていたこと・・・俺があおいに対してずっと言いたかった事だった。
あおいの事を好きになって、行けずに夢のままで終わった甲子園に貸切で連れて行きマウンドで緊張しながら告白した時とは違う・・・今は堂々と言えた。
確かな思いをあおいに伝えた。
「・・・・・・うん。ボクで良ければ、お願いします。でも・・・まさかこのタイミングだとは思わなかったよ」
あおいは瞼を閉じて笑みを浮かべ、閉じた瞳から溢れる涙を人差し指で拭う。
ここから始まるんだ。俺の・・・俺の新しい道が!
幸せな日々かこれから続くのだとあおいも俺も・・・・・・そう思っていたのだ。
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